春の終わりの頃、山里の小さなツアーをしていた時のことです。
参加者の一人が小径の脇に小さな「ニワゼキショウ」の花を見つけました。
そうすると皆が腰をかがめ、「幼い頃の実家の庭に咲いていた」、「懐かしいね」、「よく見るとかわいいね」・・・と、しばし花談義が続きました。ツアーの行程にはなかった出来事です。しかし、花談義の時間がツアーの中で一番楽しかったと参加者の声。
これからの旅は、有名な寺院や雄大な景観を訪ねることだけではなく、旅人の足元にある、小さな世界に眼差しを向ける時間があって欲しいと思います。
小さな花は小さいながらも、せいいっぱい、咲きほこっているのです。他の何ものをもってしてもこれに替えることはできない。感動はまわりにあふれているのです。それに気づく感性が求められているのではないでしょうか。
よくみれば なずな花咲く 垣根かな (芭蕉)
文責 猿渡 弘治
